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ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ビルマの日々
(Burmese Days)
作品データ
著者:ジョージ・オーウェル
ジャンル:社会小説/植民地文学
孤独な木材商が、帝国の空気にじわじわ削られていく話
舞台は1920年代のイギリス領ビルマ、地方の小さな町チャウクタダ。
木材商のジョン・フローリーは、白人クラブ中心の窮屈な社会にうんざりしつつも、そこから逃げ切れずに暮らしている。親友はインド人医師ヴェラスワミ。ただ、その友情すら「帝国の序列」と噂と陰謀に巻き込まれていく。
腐敗した判事ウ・ポー・キンは、クラブ入りのためにヴェラスワミを潰そうとし、フローリーにも脅迫状を送ってくる。そこへ英国人女性エリザベスが現れ、フローリーの気持ちは一気に揺れる。恋、体面、差別、保身が絡まり合って、町全体が少しずつ壊れていく。
ざっくり時系列
チャウクタダでウ・ポー・キンがヴェラスワミ失脚を企む
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フローリーが脅迫状を受け取り、板挟みになる
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エリザベスが町に来て、フローリーが恋に落ちる
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フローリーが愛人マ・フラ・メイを追い出す
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ヴェラル中尉が来て、エリザベスが彼に傾く
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クラブの現地人会員選出を巡り対立が激化する
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反英暴動が起き、フローリーがヴェラスワミを擁護する
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ウ・ポー・キンが最後の一手でフローリーの名誉を傷つける
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フローリーが破滅し、ヴェラスワミも別の地へ送られる
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ウ・ポー・キンがクラブ入りを果たすが、その直後に倒れる
物語の主要人物
・ジョン・フローリー
主人公の木材商人。白人社会と現地への愛着の間で揺れる
・ヴェラスワミ医師
インド人医師。クラブ入会を望み、陰謀の標的にされる
・ウ・ポー・キン
腐敗した治安判事。クラブ入りのために策を巡らせる
・エリザベス・ラッカースティーン
英国人女性。結婚と地位を求め、町の力関係に巻き込まれる
・マ・フラ・メイ
フローリーのビルマ人の愛人。追い出されたことで立場が崩れる
・ヴェラル中尉
臨時赴任の憲兵。町をかき回し、人間関係を変える
白人クラブの息苦しさが、毎日をゆっくり腐らせる
チャウクタダの白人社会は、クラブを中心に回っている。誰と付き合うか、何を信じるふりをするか、誰を見下すか。そういう空気が当たり前みたいに漂っていて、フローリーもそこから自由になれない。
ビルマの文化を好きだと思う気持ちがあっても、口に出せば「裏切り者」扱い。逆に、黙っていれば自分がどんどん小さくなる。フローリーの孤独は、ただの個人の悩みじゃなくて、仕組みそのものに閉じ込められた感じで進んでいく。
恋と体面が絡むと、正しさはあっさり負ける
エリザベスの登場で、フローリーは「ここから抜け出せるかも」と夢を見る。けど同時に、彼女に認められたい気持ちが、彼の弱点にもなる。
エリザベスの側にも事情があり、叔母の圧、生活の不安、階級への憧れがある。だから恋が始まっても、純粋な気持ちだけでは進まない。そこへヴェラル中尉が来て、雰囲気が一気に崩れる。恋と世間体が絡んだ瞬間、フローリーの言葉や行動は、どれも裏目に回りやすくなっていく。
陰謀が勝って、町は平然と次の顔をする
ウ・ポー・キンは、ヴェラスワミを落とすためなら手段を選ばない。匿名の手紙、脅迫、騒動の仕込み。さらに町の緊張が高まり、暴動や報復が重なると、誰もが「正しいかどうか」より「安全かどうか」で動き始める。
フローリーが勇気を出してヴェラスワミを守ろうとしても、最後はもっと汚い一撃が飛んでくる。名誉が崩れたあとのスピードが早くて、町は何事もなかったかのように次へ進む。フローリーの破滅、ヴェラスワミの転落、そしてクラブの席は埋まっていく。
この小説のポイント
・植民地社会の「空気」で人が追い詰められていく流れ
・友情と恋が、制度と偏見に簡単に踏み潰される構図
・白人クラブ、現地官僚、噂と体面が絡む生々しい人間関係
・勝者も救われるわけじゃない、という後味の残し方
たぶんこんな小説
派手な冒険というより、蒸し暑い町の空気の中で、人の立場と感情がじわじわ動いていく感じ。
誰かが悪いというより、仕組みと空気が人をそうさせる瞬間が何度も出てくる。
読み終わったあと、クラブのざわざわした会話とか、噂の回り方とかが、妙に頭に残りやすいタイプの一冊。

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