※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
コレラの時代の愛
(El amor en los tiempos del cólera)
作品データ
著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス
ジャンル:恋愛小説/文学小説
一生待ち続けた男と、人生を選び続けた女の話
若い頃に恋に落ち、引き裂かれ、別々の人生を歩んだフロレンティーノとフェルミナ。
彼は彼女を一生愛し続けると決め、彼女は別の男と結婚し、家庭と現実を生きていく。
何十年もの時間、無数の遠回りと人生の積み重ねを経て、二人は老年期に再び向き合う。
これは「長すぎる片想い」と「結婚生活の現実」と「歳を取ってからの愛」が、全部同じ時間軸で進んでいく物語。
ざっくり時系列
若いフロレンティーノとフェルミナが恋に落ちる
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叔母エスコラスティカの助けで秘密の手紙のやり取りが始まる
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フェルミナの父ロレンツォが交際を禁じ、フェルミナを別の街へ連れ出す
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遠距離で連絡を取り続けるが、帰郷後フェルミナが突然別れを告げる
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フェルミナが医師ジュベナール・ウルビーノと結婚する
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フロレンティーノは彼女を想い続けながら、数え切れない情事を重ねる
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フェルミナとウルビーノは長い結婚生活を送り、老年期を迎える
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ウルビーノが事故で亡くなる
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葬儀後、フロレンティーノが再びフェルミナに愛を告白する
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二人は老年期に恋人として結ばれ、川船で旅に出る
物語の主要人物
・フロレンティーノ・アリサ
フェルミナを一途に愛し続けた男性。電信会社で働き、後に実業家となる。
・フェルミナ・ダーサ
物語の中心人物。若き日の恋と結婚生活、老年期の選択を生き抜く女性。
・ジュベナール・ウルビーノ
近代化と秩序を信じる医師。フェルミナの夫として家庭を築く。
・ロレンツォ・ダーサ
フェルミナの父。娘の結婚と将来を強く管理する存在。
恋に落ちた若さと、引き裂かれる二人
若いフロレンティーノとフェルミナは、手紙と電信を通じて強く結びつく。
だが父ロレンツォの介入で物理的にも心理的にも距離が生まれ、フェルミナは突然その恋を「幻想だった」と切り捨てる。
ここで物語は、よくある恋愛成就の方向には進まない。
結婚という現実と、待ち続ける時間
フェルミナはウルビーノと結婚し、安定と社会的地位のある人生を選ぶ。
一方フロレンティーノは彼女を想い続けると誓いながら、無数の女性と関係を持つ。
結婚生活は決して理想だけではなく、裏切りも倦怠も含めた現実として描かれていく。
老年期に訪れる、もう一度の愛
ウルビーノの死をきっかけに、フロレンティーノは長年胸に秘めてきた想いを再びフェルミナに伝える。
最初は拒絶するフェルミナだが、若さではなく、積み重ねた時間と成熟の中で彼を見直していく。
二人は老年期に恋人として結ばれ、川船で終わりのない旅に出る。
この小説のポイント
・若さの恋、結婚生活、老年期の愛を同じ重さで描いている
・一途さと身勝手さが同居するフロレンティーノという存在
・結婚は幸福か、安全か、選択の結果として描かれる
・時間そのものが愛の形を変えていく構造
たぶんこんな小説
情熱的でロマンチックに見えつつ、実はかなり現実的で、人間の矛盾がそのまま置かれている物語。
読んでいると「愛って何だっけ」と何度も立ち止まりたくなるし、若い頃と同じ感覚では読めないタイプの小説。
時間が長く、人生も長く、その中で愛がどう変質していくのかを、静かに見せてくる一冊。

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