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ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
白い恐怖
著者:フランシス・ビーディング
記憶を失った男が「自分は院長だ」と信じ込んだまま、恐怖の正体を追い始める話
精神病院に現れた、記憶喪失の男。彼はなぜか「自分はこの病院の院長だ」と思い込んでいる。周囲の違和感、断片的に浮かぶ不安、そして説明できない恐怖。一方、彼を診る女医は、その言動の裏に隠された記憶の鍵を探り始める。物語は、男の内側で起きている恐怖と、女医の冷静な推理が交差しながら、少しずつ真実へ近づいていく心理サスペンス。
ざっくり時系列
記憶を失った男が精神病院に現れる
↓
男は自分を院長だと思い込んで行動する
↓
病院内で違和感と恐怖を覚え始める
↓
女医が男の過去と記憶に疑問を持つ
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夢や連想を手がかりに記憶の断片が浮上する
↓
男の恐怖の正体と、隠されていた出来事が明らかになる
物語の主要人物
・記憶喪失の男
精神病院で目覚め、自分を院長だと信じ込んでいる
・女医
男を診察しながら、記憶喪失の原因と恐怖の正体を探る
精神病院という閉ざされた空間が、不安を増幅させる
舞台はほぼ精神病院の中だけ。逃げ場のない環境で、男の視点を通して描かれる日常は、どれも微妙にズレている。人の視線、会話の間、些細な行動。その積み重ねが、「何かがおかしい」という感覚を強めていく。読者も男と同じ位置に立たされ、安心できる足場を失っていく。
記憶を辿る推理が、恐怖を少しずつ言語化していく
女医の役割は、謎解き役でありながら、感情的にはかなり抑制されている。彼女は男の言葉や反応、夢の内容を手がかりに、論理的に記憶の奥へ踏み込んでいく。その過程で、恐怖は正体不明のものから、具体的な過去の出来事へと形を変えていく。
恐怖は外から来るのか、それとも内側から生まれるのか
終盤で浮かび上がるのは、怪物や事件そのものよりも、人間の心が作り出す恐怖の構造。忘れたはずの記憶が、形を変えて残り続けることで、どれほど強い影響を及ぼすのかが示される。派手な展開はないが、その分、じっとりとした緊張感が最後まで続く。
この小説のポイント
・記憶喪失を軸にした心理サスペンス
・精神病院という閉鎖空間の使い方
・推理と心理描写が並行して進む構成
・恐怖の正体を「心の問題」として描く視点
たぶんこんな小説
怖さは大声で叫ばれないし、急に驚かせてこない。代わりに、静かな違和感がずっと隣に座っている感じ。読み進めるほど、自分の記憶や感覚も信用できなくなってくる。派手さより、後からじわっと効いてくるタイプの一冊。

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