※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ダールグレン(2)
著者:サミュエル・R・ディレイニー
出口のない都市で、名前も記憶も溶けていく話
原因不明の異変に閉じ込められた都市ダールグレン。時間も秩序も壊れたこの街で、人々は普通の社会のルールを手放しながら生き延びている。主人公キッドは詩を書き、欲望に流され、仲間と出会い、別れながら、この都市そのものに飲み込まれていく。物語は解決へ向かわず、都市=迷宮の内部をひたすら彷徨い続ける。
ざっくり時系列
都市ダールグレンの異常状態が続いている
↓
キッドは街に留まり、詩や記録を書き続ける
↓
スコーピオンズとの関係がより深まる
↓
性的・暴力的な出来事が日常として描かれる
↓
都市の構造や時間感覚の歪みが強まる
↓
物語は明確な終着点を示さないまま進行する
物語の主要人物
・キッド
記憶に欠落を抱えた青年。詩を書きながら都市を彷徨う。
・スコーピオンズ
都市内で活動する集団。キッドが関わっていく仲間たち。
・都市ダールグレン
舞台となる街。崩壊した秩序と異常な時間を抱える存在。
物語というより、都市に住み続ける感覚
第2巻では、事件が起きて解決する、という読みやすい流れはさらに薄れていく。代わりにあるのは、都市に「慣れていく」感覚。異常が異常じゃなくなり、危険も欲望も日常に溶け込んでいく。読者もキッドと同じように、この街の空気に順応させられていく。
書くことと生きることが混ざり合う
キッドは詩やメモを書くけれど、それが現実を写しているのか、現実を作っているのかは曖昧になっていく。言葉が世界を説明する道具じゃなく、世界そのものの一部として存在している感じが強くなる。読む側も「理解する」より「浸かる」姿勢を求められる。
迷子のまま進み続ける構造
都市から脱出する計画も、謎の正体が明かされる展開も、ここでは用意されていない。道が分かれても地図はなく、同じ場所を何度も通っているような感覚が残る。物語が進んでいるのか、停滞しているのかすら判然としない状態が続く。
この小説のポイント
・都市そのものが主役として機能している
・時間と記憶の断絶が物語構造に組み込まれている
・性的・暴力的描写が日常の一部として扱われる
・読解より体験を重視する構成
たぶんこんな小説
話を追うというより、知らない街に長期滞在する感じ。意味がわからない出来事も、そのうち「そういうもの」として受け入れてしまう。読み終えても整理はつかないけど、頭の中に街の地形だけが残り続ける、不思議な読後感の一冊。

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