※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
パルムの僧院
(La Chartreuse de Parme)
著者:スタンダール
ナポレオンに憧れた坊ちゃんが、戦場と宮廷と恋で人生ぐちゃぐちゃにされる話
若い貴族ファブリスは、ナポレオンに一発かましたいって勢いで家を飛び出すけど、現実の戦争は想像の100倍ぐちゃぐちゃ。
その後は、架空のパルマ宮廷で政治の駆け引きに巻き込まれ、恋とスキャンダルと投獄までセットで転がっていく。
助けてくれるのは、頭が切れて行動力バケモンの叔母ジーナと、政治のプロのモスカ伯爵。
なのに肝心の本人は、理想と衝動と恋に引っ張られて、人生の舵が常に横滑りしていく。
ざっくり時系列
フランス軍がミラノに侵攻し、ロンバルディアがざわつく
↓
ファブリスがナポレオンに加わろうとして家を出る
↓
放浪中に金も馬も失い、スパイ扱いで投獄される
↓
看守の妻の助けで脱獄し、軍服を手に入れる
↓
ワーテルローの戦場へ迷い込み、混乱の中で負傷して帰還する
↓
家で告発され、逃亡を余儀なくされる
↓
叔母ジーナがモスカ伯爵と組み、ファブリスを聖職コースに乗せる
↓
ファブリスがナポリの神学校へ行き、数年後にパルマへ戻る
↓
女優絡みの喧嘩で男を殺し、パルマから逃亡する
↓
裁判で有罪になり、ジーナが恩赦を取り付けようと動く
↓
王子が裏で12年投獄を狙い、ファブリスは塔に入れられる
↓
ジーナが秘密通信で脱獄計画を進める
↓
牢の窓越しにクレリアと恋に落ちる
↓
脱獄するが、クレリアは「二度と会わない」と誓って苦しむ
↓
ジーナが王子暗殺計画を動かし、王子が死に、新王が即位する
↓
ファブリスは無罪となり聖職者として名声を得る
↓
暗闇でだけ会う約束でクレリアと関係が復活し、子供が生まれる
↓
子供が実際に亡くなり、クレリアも死ぬ
↓
ファブリスは修道院に隠棲し、ほどなく死ぬ
↓
ジーナも直後に死ぬ
物語の主要人物
・ファブリス・デル・ドンゴ
若いイタリア貴族。理想と衝動で動き、戦場から宮廷まで転げ落ちていく
・ジーナ(サンセヴェリーナ公爵夫人)
ファブリスの叔母で最大の後ろ盾。宮廷での影響力と行動力が桁違い
・モスカ伯爵
パルマの実力者。政治の技術でファブリスを救おうとする
・ラヌーチェ=エルネステ4世
パルマの統治者。ジーナやファブリスを政治的に揺さぶる
・クレリア・コンティ
監獄の司令官コンティ将軍の娘。塔の中のファブリスと恋に落ちる
・コンティ将軍
要塞と監獄の統治者。ファブリスに強い敵意を向ける
・フェランテ・パッラ
詩人で革命家で暗殺者でもある男。ジーナに強く惹かれ、計画の実行役になる
17歳の理想が、ワーテルローで粉々になっていく
序盤の肝は、ファブリスの「ナポレオン最高!」ってテンションと、現実の戦場のギャップ。
戦場は英雄譚じゃなく、煙と誤解と偶然でできた大混乱で、ファブリス本人も「俺ほんとに戦ってた?」ってなる。
ここで、主人公の人生がずっと“思ってたのと違う方向”に進む予感がガツンとくる。
パルマ宮廷は、人間関係で首が飛ぶタイプの盤上ゲーム
中盤は、恋愛というより政治劇がメイン級。
王子の機嫌、恩赦の一文、陰謀の握り合い、革命の火消し、証拠の焼却。
ファブリス本人が何かするというより、ジーナとモスカが「彼を生かすために政治を回す」場面がどんどん濃くなる。
しかも、助けようとするほど状況がねじれていくのがしんどい。
塔の恋が甘いのに、最終的に一番痛い
ファブリスが投獄されてからの恋が、妙にロマンチックなのに、結末は苦い。
窓越しの恋、秘密通信、脱獄、誓い、暗闇でだけ会う約束、子供、そして喪失。
恋が救いになる瞬間は確かにあるけど、その救いが長く続かないのが、最後まで残る後味になる。
この小説のポイント
・戦場の混乱描写が、英雄物語じゃなく「現場のぐちゃぐちゃ」
・宮廷政治が超具体的で、たった一文の抜けで運命が変わる
・主人公が“自分で人生を選んでるつもり”なのに、外部の力で押し流され続ける
・恋愛がきれいに成就する話じゃなく、誓いと責任と損失が積み重なる
たぶんこんな小説
前半は、勢いで戦場に突っ込む青春の暴走。
中盤は、宮廷という名の人間関係サバイバル。
後半は、恋が一番あったかいのに一番残酷なやつ。
タイトルの修道院は最後にちょろっと出るだけなのに、読み終わると「結局そこに行くしかなかったんだな…」って感じがじわっと残る。

コメント