※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
赤と黒
(Le Rouge et le Noir)
著者:スタンダール
貧乏な天才青年が、恋と野心で成り上がろうとして全部燃やし尽くす話
大工の息子ジュリアン・ソレルは、才能と努力、そして計算と演技を武器に、田舎からパリの上流社会へ食い込もうとする。軍隊での栄光が閉ざされた時代、彼は聖職者の道を使って出世を狙うが、恋愛と虚栄心が絡み合っていき、最後は取り返しのつかない破滅へ突っ込んでいく。
ざっくり時系列
田舎の大工の息子ジュリアンが読書と幻想に浸る
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シェラン神父の助けでレナール家の家庭教師になる
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マダム・ド・レナールとの関係が露見して終わる
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ブザンソンの神学校に入る
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ピラール神父に気に入られ、ラ・モール侯爵の秘書になる
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パリで上流社会の偽善と軽蔑を浴びる
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秘密任務で危険な役回りを担う
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マチルドと駆け引きの恋に落ち、妊娠が発覚する
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侯爵がいったん出世と結婚を認めかける
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レナール夫人の手紙でジュリアンの評判が崩れる
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教会でレナール夫人を撃ち、投獄され死刑になる
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ジュリアンは死を受け入れ、処刑される
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マチルドは遺体を弔い、レナール夫人も後を追うように亡くなる
物語の主要人物
・ジュリアン・ソレル
田舎の貧しい家の出身で、出世を狙う知的で野心的な青年
・マダム・ド・レナール
ヴェリエールの市長レナールの妻で、ジュリアンと関係を持つ
・ムッシュ・ド・レナール
ヴェリエールの市長で、ジュリアンを家庭教師として雇う
・アベ・シェラン
地元の聖職者で、ジュリアンの進路を用意する
・ピラール神父
神学校の関係者で、ジュリアンの保護者となる
・ラ・モール侯爵
パリの有力者で、ジュリアンを秘書として雇う
・マチルド・ド・ラ・モール
侯爵の娘で、ジュリアンとの関係に深くのめり込む
田舎で始まる、出世のための仮面生活
舞台はフランシュ=コンテ地方の村ヴェリエール。大工の息子ジュリアンは、家業で殴られながら働くより、ナポレオン時代の軍の栄光を読んで空想する青年だ。けれど復古王政の時代、平民が軍でのし上がる道は閉ざされている。だから彼は黒い制服の側、つまり教会の道で上へ行こうとする。宗教そのものへの関心というより、暗記したラテン語や聖書の文句で「賢さ」を見せて、上の階級に食い込む感じ。
神学校とパリで見える、上流の空気の息苦しさ
シェラン神父の助けでレナール家の家庭教師になり、そこでマダム・ド・レナールとの関係が起きて終わる。その後ジュリアンは神学校へ行くが、そこでも徒党や空気の重さに気づく。ピラール神父に気に入られたジュリアンは、今度はパリでラ・モール侯爵の秘書になる。頭の回転や才知があっても、周囲は彼を粗野な平民として見下す。ジュリアン自身も、エリート層に広がる物質主義と偽善を肌で感じていく。
恋が引き金になって、出世が崩れ落ちる
パリでは侯爵の娘マチルドとの関係が激しくこじれていく。無関心を装ったり、別の女性にラブレターを送って嫉妬を煽ったり、恋がゲームみたいな形で進む。でもその結果、マチルドは妊娠し、侯爵も最初は怒りながらもジュリアンに称号や地位を与え、結婚を認める方向へ傾く。ところがヴェリエール側から届いた手紙が決定打になる。告解師の勧めでマダム・ド・レナールが書いたその手紙は、ジュリアンを「出世欲の強い卑劣漢」として告発する内容だった。
教会の銃声から、処刑まで一直線
祝福が取り消されそうだと知ったジュリアンは、銃を持ってヴェリエールへ戻り、教会のミサの最中にマダム・ド・レナールを撃つ。彼女は助かるが、ジュリアンは投獄され死刑を宣告される。マチルドは賄賂などで救おうとするが、ジュリアンは死を受け入れる。処刑後、マチルドは彼を弔い、マダム・ド・レナールもその数日後に静かに息を引き取る。
この小説のポイント
貧しい出自の青年が、才能と努力だけじゃなく、演技や欺瞞も使いながら上へ行こうとする。その過程で、恋愛がただの甘い話じゃなく、階級・虚栄・社会の視線と絡み合って、人生を決定的に揺さぶっていくのが中心になってる。
たぶんこんな小説
出世したい気持ちと、心が勝手に燃え上がる感じがずっとせめぎ合ってる。社会の空気は冷たいのに、本人の中だけやたら熱い。その温度差がじわじわ効いて、最後は一気に崩れていくタイプの物語。

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