※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ペスト
(La Peste)
作品データ
著者:アルベール・カミュ
ジャンル:文学小説/不条理文学/寓話
理由も意味も分からない災厄の中で、人がそれでも人として振る舞おうとする話
突然ペストに襲われ、封鎖された街オラン。逃げられない状況の中で、人々は恐れ、利己に走り、信仰にすがり、あるいは黙々と患者を救おうとする。誰も状況を支配できないまま、それでも各人が選んだ行動だけが積み重なっていく。
ざっくり時系列
街にネズミの大量死が発生する
↓
原因不明の病で人が死に始める
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医師たちがペストを疑う
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当局が対応をためらう
↓
街が完全に封鎖される
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脱出計画や密輸が横行する
↓
ボランティア医療活動が始まる
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暴動と戒厳令が敷かれる
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血清の試みが失敗する
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死者数が減少し始める
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ペストが終息し、街が解放される
物語の主要人物
・ベルナール・リウ
オランの医師。現場で治療を続ける
・ジャン・タルー
滞在者。自主的に救護活動を組織する
・レイモン・ランベール
パリから来た新聞記者。街から出ようとする
・パヌルー神父
イエズス会の司祭。疫病を神の意志として語る
・ジョゼフ・グラン
市役所職員。地道に支援を続ける
・コタール
疫病下で利益を得る密輸業者
気づかれないまま始まる異変
物語は、街中でネズミが死に始めるという、取るに足らない異変から始まる。人々は不快に思いながらも深刻には受け取らない。しかし次第に、人間の死が重なり、日常は音を立てずに崩れていく。
封鎖された街で露わになる選択
街が閉ざされると、人々はそれぞれの立場で行動する。恋人の元へ帰りたい者、信仰に意味を求める者、疫病と向き合うことを選ぶ者。誰もが正解を持たないまま、選択だけが積み重なる。
終息と、その後に残るもの
やがてペストは収束し、街は解放される。再会と祝賀の裏で、失われた命は戻らない。語り手は、この出来事を記録した理由を明かし、人は極限状態でも完全に悪にはならないと静かに語る。
この小説のポイント
・理由のない災厄という前提
・英雄ではない人々の行動
・信仰、利己、連帯の同時進行
・記録という行為の意味
たぶんこんな小説
重くて暗いのに、不思議と冷静。希望を大きく掲げるわけでも、絶望に沈みきるわけでもない。ただ、起きてしまった現実の中で、人がどう振る舞ったかを淡々と見せてくる。読み終わると、世界が少し静かに見える。

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