※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
アルテミス
(Artemis)
作品データ
著者:アンディ・ウィアー
ジャンル:SF/犯罪サスペンス/陰謀劇
月の街で小悪党やってたら、都市ごと詰みかけた話
月面都市アルテミスで、配達員兼密輸業者として生きてるジャズは、金持ち実業家トロンドから「採取装置を壊してほしい」という危ない依頼を受ける。
やってみたら暗殺だのマフィアだの行政官の思惑だのが一気に噴き出して、最後は街の空気が毒で汚染されて全住民が1時間以内に気絶コース。ジャズは自分の尻拭いをしつつ、街も救って、結局またギリギリのラインで生き残る道を選ぶ。
ざっくり時系列
ジャズがトロンドから破壊工作の依頼を受ける
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父アマーや仲間から機材とロボットHIBを借りる
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観光客のふりでアポロ11号地点へ行き、仕込みを作る
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月面で採取ハーベスターを破壊、追跡されて逃走
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旧友デールに見つかり、ジン・チューとの仲介で揉める
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トロンドが殺され、ジャズが暗殺者に狙われる
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ZAFOケースを確保し、スヴォボダが正体を解析
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サンチェス社が犯罪組織オ・パラシオのフロントだと判明
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ジンが裏切るが、ジャズが罠を返してアルバレスを拘束
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行政官ングギの狙いが明かされ、工場破壊作戦へ
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製錬所の暴走で毒が発生、街が窒息寸前になる
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ジャズが酸素貯蔵庫へ走り、街を救う
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報酬を得るが罰金で大半が消え、密輸を公認枠にする交渉をする
物語の主要人物
・ジャスミン「ジャズ」バシャラ
月面都市で配達員兼密輸業者として生きる主人公。
・トロンド・ランドヴィク
裕福な実業家。ジャズに破壊工作を持ちかける。
・マーティン・スヴォボダ
科学者の友人。ZAFOの正体を突き止める。
・フィデリス・ングギ
都市の管理者。裏で大きな狙いを持って動く。
・デール・シャピロ
EVAギルド側の人物。ジャズと因縁があるが鍵になる。
・ルディ・デュボア
都市の治安側の責任者。実務の受け皿。
・マルセロ・アルバレス
犯罪組織側の殺し屋。ジャズを狙う。
・ジン・チュー
トロンドの仲間。ZAFOケースに関わり、裏切りもする。
依頼は破壊工作、でも月の外での一歩が地獄
ジャズはトロンドに「サンチェス・アルミニウムを買収したい、そのために採取装置を壊してくれ」と頼まれる。提示された金は人生が変わるレベル。
彼女は父アマーから溶接機材を借り、仲間から小型ロボHIBを借り、観光客のふりでアポロ11号の着陸地点へ行って仕込みをする。
翌日、電子工作で自分が居住区にいるよう偽装しつつ、月面を歩いてハーベスターを破壊。だが監視カメラに見つかり、EVAチームから逃げる羽目になる。
暗殺と裏切りとZAFO、街の支配ゲームに巻き込まれる
逃げた先で、旧友デールとの因縁が再燃しつつ、ジン・チューが絡んで話が一気に危なくなる。
そしてトロンドが殺される。ジャズも暗殺者に襲われるが、ジンの持っていたZAFOケースを奪って逃げ、スヴォボダに解析させる。
判明したのは、サンチェス社がブラジルの犯罪シンジケート「オ・パラシオ」のフロントで、殺し屋アルバレスがジャズを狙っていること。
ジンは自分を守るために裏切るが、ジャズはそれも読んでいて、逆にアルバレスを無力化して治安側ルディに引き渡す。
工場を飛ばしたら毒が出た、街の空気が残り1時間
ZAFOの正体は「ゼロ減衰光ファイバー」。低重力が必要な製造で、アルテミスが通信革命の中心になれる、とんでもないお宝だった。
行政官ングギは、街が犯罪組織に乗っ取られるのを防ぐため、ジャズを囮として使っていたことを明かす。
ジャズは父や仲間を巻き込み、サンチェスの製錬所を破壊してオ・パラシオを止めにかかる。ところが、暴走した工場で致死性のクロロホルムが発生し、大気中に放出。住民が意識不明で倒れるまで1時間を切る。
ジャズは酸素貯蔵庫へ走り、デールの助けもあってギリギリで街を救う。
この小説のポイント
・月面都市の生活コストとルールが、犯罪と陰謀の燃料になってる
・小さな破壊工作が、都市経済と権力闘争に直結していく加速感
・ZAFOという技術ネタが、物語の「奪い合いの理由」になってる
・最後は英雄っぽいけど、主人公はあくまで小悪党のまま踏みとどまる
たぶんこんな小説
月の街のリアルな制約の中で、軽口叩きながら綱渡りする感じがずっと続く。事件はどんどんデカくなるのに、主人公の動機は割と俗っぽくて、そのギャップが楽しい。読み終わると、アルテミスって街そのものが一人の登場人物みたいに見えてくるやつ。

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