※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ポルトベーロの魔女
著者:パウロ・コエーリョ
不思議な力を持つ女性が、語られ、誤解され、神話になっていく話
主人公アテナは、孤児として生まれ、養子として育てられ、やがて「特別な力を持つ女性」として人々の記憶に刻まれていく。彼女自身の語りではなく、周囲の人々の証言によって人生が断片的に描かれ、信仰、愛、恐れ、崇拝が交錯する中で、一人の女性が“魔女”と呼ばれる存在へ変わっていく。
ざっくり時系列
ルーマニアの孤児院で生まれる
↓
ベイルートの夫婦に引き取られる
↓
愛情を受け、教会で音楽と信仰に触れて育つ
↓
成長とともに、不思議な力が表に出始める
↓
アテナの言動が周囲の注目を集める
↓
支持と反発が同時に広がっていく
↓
彼女の存在が「物語」として語り継がれていく
物語の主要人物
・アテナ
孤児として生まれ、不思議な力を持つ女性。
・養父母
ベイルートでアテナを育てた夫婦。
・証言者たち
アテナを知り、彼女について語る周囲の人々。
孤児として始まる、静かな人生のスタート
アテナはルーマニアの孤児院から、異国の地ベイルートへと迎えられる。愛情を注がれ、教会でゴスペルを聴き、信仰を「教え」ではなく「感覚」として身につけていく。この幼少期が、彼女の内側にある感受性と強さを形作っていく。
力の目覚めと、人々の視線
成長するにつれ、アテナには説明のつかない力が現れてくる。それは癒しであり、直感であり、言葉にしづらいものだ。その力は人を惹きつける一方で、恐れも生む。彼女自身が何者なのかよりも、「周囲が彼女をどう見るか」が物語を動かし始める。
語られることで生まれる「魔女」
この物語では、アテナ本人の声よりも、彼女を知る人々の証言が積み重なっていく。母として、友として、信奉者として、批判者として。断片的な語りが重なり、一人の女性が象徴的な存在へと変化していく過程が描かれる。
この小説のポイント
・主人公を直接描かず、証言で浮かび上がらせる構成
・信仰と力を肯定も否定もせず並べる視点
・「理解されない存在」が生まれる過程の描写
・神話が作られていく感覚を味わえる語り口
たぶんこんな小説
一人の人生を追っているはずなのに、気づくと「人は何を信じ、何を恐れるのか」を考えさせられる感じ。静かで、どこか祈りに近い空気があって、読み進めるほどに余白が広がっていくタイプの物語。読み終えた後も、アテナという名前が頭のどこかに残り続ける。

コメント