※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
ジム・ボタンの冒険
(Jim Knopf und Lukas der Lokomotivführer/Jim Knopf und die Wilde 13)
作品データ
著者:ミヒャエル・エンデ
ジャンル:児童文学/冒険ファンタジー
小さすぎる島を飛び出したら、機関車で世界の謎まで回収しに行く話
小さな島モローランドに、謎の小包で届いた赤ちゃんが養子になり、ジム・ボタンとして育つ。ところがジムが大きくなるにつれて、島が狭すぎると王が悩み、機関車エマを追い出す決断をする。機関士ルークはエマと島を去ることを選び、ジムもついていく。エマを船に改造して海を渡った先は、マンダラという国。そこで皇帝の娘リー・シーが誘拐されたと知り、ジムとルークは救出へ向かう。旅の途中で仲間が増え、ドラゴン・シティで子どもたちを鎖につないでいたグラインドトゥース夫人と対峙し、姫と子どもたちを解放する。最後はモローランドへ戻り、島の問題もジムの未来も、意外な形でちゃんと広がっていく。
ざっくり時系列
モローランドに宛先不明の小包が届き、中から赤ちゃんが見つかる
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赤ちゃんは島で養子になり、ジム・ボタンと名付けられる
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ジムが成長し、王は島が狭すぎると心配する
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王がルークに、機関車エマを島から追い出すよう命じる
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ルークはエマと島を去る決意をし、ジムも同行する
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エマを船に改造して海へ出て、マンダラの海岸に到着する
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首都ピンでピンポンと出会い、皇帝の娘リー・シー誘拐を知る
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誘拐の背景を調べるうちに、グラインドトゥース夫人、ワイルド13、ソロウランドの名が浮かぶ
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長い旅を経てドラゴン・シティへ向かう
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旅の途中で見かけの巨人ター・ター、半ドラゴンのネポムクと出会う
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ドラゴン・シティでリー・シー姫と多くの子どもたちを解放する
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グラインドトゥース夫人を連れて黄河を遡り、マンダラへ戻る
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歓迎を受け、グラインドトゥース夫人の変化と島への帰還が語られる
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援助により浮島ニューモローランドを手に入れ、ジムの住まいになる
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モローランドで温かく迎えられ、ジムとリー・シーが婚約する
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エマが蒸気機関車の赤ちゃんを産み、モリーと名付けられる
物語の主要人物
・ジム・ボタン
モローランドで育った少年。ルークとともに旅に出て、出自の謎にも近づいていく
・ルーク(ルーカス)
機関車エマの機関士。実践的で頼れる相棒として旅を引っ張る
・エマ
ルークとジムの蒸気機関車。船に改造されたり、旅の中心になる
・リー・シー
マンダラの皇帝の娘。誘拐され、救出の目的になる
・ピンポン
首都ピンで出会う小さな少年。情報と縁をつないでくれる
・グラインドトゥース夫人
ドラゴン・シティで子どもたちを支配していた存在。物語の大きな敵役になる
・ター・ター
見かけの巨人。遠くからは巨人に見える性質を持ち、旅の仲間になる
・ネポムク
半ドラゴン。ドラゴンたちの社会に居場所がなく、ジムたちと行動を共にする
・ワイルド13
海賊団。誘拐や事件の背景に関わる存在として名前が浮かぶ
小包の赤ちゃんから始まって、島の限界が冒険の点火装置になる
モローランドは、宮殿と線路と駅と店と家がぎゅっと詰まった、本当に小さな島。そこへ住所がほとんど判読できない小包が届き、中から赤ちゃんが出てくる。島の住民たちは赤ちゃんを養子にして、ジム・ボタンと名付ける。
でもジムが成長すると、王は「もう島に余裕がない」と焦り始め、エマを追い出す決断をする。ここでルークが怒ってエマと島を出る。ジムも一緒に行く。つまり、島の狭さっていう超現実的な問題が、そのまま冒険の発射ボタンになる。
マンダラで姫誘拐事件に巻き込まれ、ジムの謎へつながっていく
エマを船に改造して海を渡り、たどり着いたマンダラの首都ピンで、ピンポンと仲良くなる。そこで皇帝の娘リー・シーが誘拐され、ドラゴン・シティに監禁されていると知る。
ルークとジムは救出に動くけど、調べるほどに「グラインドトゥース夫人」「ワイルド13」「ソロウランド」みたいな名前が出てきて、リー・シーの話がジム自身の来歴の謎と直結していく。助ける話が、そのまま自分の過去を追う話に変わっていく感じ。
ドラゴン・シティで救出、敵の像がひっくり返る
旅は危険だらけだけど、その途中でター・ターやネポムクという仲間が増える。最終的にドラゴン・シティへ辿り着き、ジムとルークはリー・シー姫だけじゃなく、グラインドトゥース夫人に売られていた多くの子どもたちも解放する。
グラインドトゥース夫人は子どもたちを机に鎖でつなぎ、怒鳴りつけるように支配していた。そこをひっくり返して連れ出し、マンダラへ戻る。さらに面白いのは、帰還後にグラインドトゥース夫人が「知恵の黄金ドラゴンに変身しようとしている」みたいな変化が示されて、敵が固定じゃなく揺らぐところ。
島に帰ると、世界が広がって終わる
最後は皇帝の援助などもあって、浮島ニューモローランドを手に入れ、ジムの将来の住まいになる。モローランドへ戻れば温かく迎えられ、ジムとリー・シーは婚約。さらにエマが機関車の赤ちゃんを産んで、モリーと名付けられる。
出発の原因が「島が狭い」だったのに、帰ってくると島そのものが増えてるのが、めちゃくちゃ童話っぽい気持ちよさになってる。
この小説のポイント
・モローランドの小ささという現実的な悩みが、冒険の原動力になる
・機関車エマが乗り物であり相棒であり、物語の中心として動く
・姫救出が、ジムの出自の謎へつながっていく構造
・旅の途中で仲間が増えて、世界の見え方がどんどん広がる
・敵役にも変化やひっくり返りが用意されていて、単純な勧善懲悪で止まらない
たぶんこんな小説
明るい冒険のテンポで進みつつ、世界設定がどんどん変な方向に盛られていく感じ。島も国もドラゴンも海賊も、人魚も磁力の崖も、次から次へと面白い仕掛けが出てきて、子ども心の「それ何それ!」をずっと回してくるタイプ。読み終わると、最初の小さな島が、いつの間にか世界の入口になってたみたいな感覚が残りそうだよ。

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