※この記事には、作品の内容に触れる表現や
ネタバレを含む場合があります。 未読の方はご注意ください。
カササギ殺人事件
(Magpie Murders)
著者:アンソニー・ホロヴィッツ
ミステリー作家が仕掛けた謎に、編集者が本気で殴り込みにいく話
表の物語は、名探偵アティカス・プンドが活躍する、いかにも古典的な田舎村の殺人事件。裏の物語は、その小説を書いた作家アラン・コンウェイの死をめぐり、編集者スーザン・ライランドが現実世界で謎を追う展開。小説の中の謎と、現実の殺人が噛み合い始めたとき、「物語を読む」側だった編集者が、完全に当事者へ引きずり込まれていく。
ざっくり時系列
アラン・コンウェイの新作原稿が編集部に届く
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小説の最後の章が欠けていることが判明
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コンウェイの死が伝えられ、自殺とされる
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スーザンが原稿の最終章を探し始める
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作中小説でサー・マグナス殺害の真相が明かされる
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スーザンが現実の捜査で関係者を洗い出す
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出版社社内に決定的な手がかりがあると気づく
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上司チャールズの犯行が露見する
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事件解決後、スーザンは新しい人生を選ぶ
物語の主要人物
・スーザン・ライランド
出版社クローバーリーフ・ブックスの編集者
作家の死と原稿の謎を追う語り手
・アラン・コンウェイ
売れっ子ミステリー作家
アティカス・プンド・シリーズの作者
・アティカス・プンド
作中小説の名探偵
古典的な推理で事件を解き明かす
・チャールズ・クローバー
出版社社長
アランの担当であり、事件の鍵を握る人物
・アンドレアス
スーザンの恋人
物語終盤で彼女を支える存在
村の殺人事件が解決する一方で、現実の謎はむしろ深くなる
作中小説では、1955年の村で起きた家政婦殺害と地主サー・マグナス・パイ殺害が描かれる。名探偵プンドは、村人たちの動機や過去を丁寧に洗い出し、犯人がロバートであることを突き止める。母の秘密を守ろうとした歪んだ行動が、二つの死につながっていた、という結論に落ち着く。
ところが読者であるスーザンは、その物語が肝心なところで終わっていないことに気づく。ミステリーとして致命的な欠落。その直後に知らされる作者の死。偶然にしては出来すぎている。
編集者が物語の外に飛び出して、作者の死を調べ始める
スーザンは、作中のヒントと現実の出来事がどこかで響き合っていると感じ、コンウェイの故郷や周囲の人間関係を調べ始める。すると、彼が自分の成功作であるミステリーというジャンルを内心では嫌っていたこと、周囲に強烈な恨みを買っていたことが浮かび上がる。
出版社内でも、社長引退の話や将来の進路の誘いが重なり、スーザンは仕事と人生の選択を迫られる。そんな中で見つかる、紙に書かれた最終章。そこに仕込まれていたのは、作家が残した強烈な皮肉だった。
最終章が明かしたのは、物語そのものへの復讐だった
アランが構想していた小説群の頭文字は、あるアナグラムを形作っていた。それは彼の名探偵の名前を別の意味へひっくり返す、痛烈なメッセージ。ミステリーを軽蔑しながら、それで名声を得た作家の、最後の悪ふざけみたいな告発だった。
それを世に出されるのを恐れた人物が、現実の殺人を起こし、原稿の最終章を偽の遺書として使った。スーザンは真相にたどり着くが、その代償として命の危険にさらされる。
この小説のポイント
物語の中に、もう一つの物語が丸ごと組み込まれている
古典的ミステリーと現代ミステリーが並走する構造
編集者という立場から、作者と作品の関係が描かれる
最終章そのものが、最大の仕掛けになっている
読者が探偵役になるような読み心地
たぶんこんな小説
最初は、昔ながらの英国ミステリーを読んでる気分なのに、気づくと「今読んでるこの本自体が怪しくない?」って感覚に引きずられていく。謎解きだけじゃなく、作家と編集者、作品と現実の距離感まで一緒に考えさせられるタイプ。読み終わったあと、もう一回最初からページをめくり直したくなるやつ。

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